「あら、いくらスターでなくってもあなたの位立派ならもうそれだけで沢山だわ。」
「うそうそ。とてもつまんない。そりゃあたしいくらかあなたよりあたしの方がいゝわねえ。わたしもやっぱりさう思ってよ。けどテクラさんどうでせう。まるで及びもつかないわ。青いチョッキの虻さんでも黄のだんだらの蜂めまでみなまっさきにあっちへ行くわ。」
向ふの葵の花壇から悪魔が小さな蛙にばけて、ベートーベンの着たやうな青いフロックコートを羽織りそれに新月よりもけだかいばら娘に仕立てた自分の弟子の手を引いて、大変あわてた風をしてやって来たのです。
「や、道をまちがへたかな。それとも地図が違ってるか。失敗。失敗。はて、一寸聞いて見やう。もしもし、美容術のうちはどっちでしたかね。」
ひなげしはあんまり立派なばらの娘を見、又美容術と聞いたので、みんなドキッとしましたが、誰もはづかしがって返事をしませんでした。悪魔の蛙がばらの娘に云ひました。
「ははあ、この辺のひなげしどもはみんなつんぼか何かだな。それに全然無学だな。」娘にばけた悪魔の弟子はお口をちょっと三角にしていかにもすなほにうなづきました。
女王〔スター〕のテクラが、もう非常な勇気で云ひました。「何かご用でいらっしゃいますか。」